東京都中央区の築地場外市場で、運営側が異例の呼びかけを行っている。12月中は観光目的の訪問や食べ歩き、団体ツアーを控えるよう求めているのだ。これは、年末に向けた買い物客の増加を見越し、混雑による事故を防ぎ、地元住民や常連の買い物をスムーズにするための措置だ。
築地場外市場を運営するNPO法人「築地食のまちづくり協議会」が12月初旬にポスターを掲示し、公式ウェブサイトでも英語で注意を促している。内容は「12月は多くの買い物客が訪れるため、安全と伝統的な正月準備の文化を守るために、観光や団体ツアーは控えてください」というもの。協議会の担当者は「昨年末の混雑が深刻で、車道まで人が溢れ、買い物客から不満の声が上がった」と説明する。
築地場外市場は、2018年に中央卸売市場が豊洲へ移転した後も、約400軒の小売店や飲食店が残り、新鮮な魚介類や乾物、厨房道具を扱う食の街として人気を保っている。特に外国人観光客の増加で、平日でも賑わうが、年末は正月用の食材を求める地元客や飲食店関係者が急増する。狭い路地が特徴の市場では、観光客の食べ歩きや写真撮影が通行の妨げになりやすく、昨年は雑踏事故の懸念が高まった。
協議会の北田良尚理事長は「築地は元々、プロの仕入れ人が主役の場所。観光客の皆さんには他の時期に楽しんでもらいたい」と話す。実際、市場内の店舗からは「年末は仕入れが大変で、観光客が多いと動きにくい」「常連さんが買いやすい環境を守りたい」という声が聞かれる。一方で、観光客側からも理解を示す意見があり、SNSでは「仕方ない、地元優先で」「他の月に行けばいい」との投稿が見られる。
この呼びかけは、市場側にとって初めての試みだ。過去には混雑緩和のため、早朝来場や通販利用を推奨してきたが、観光自粛を明確に求めるのは異例。背景には、インバウンド回復による人出の急増がある。コロナ禍前から観光地化が進んでいた築地だが、移転後もSNSの影響で訪れる外国人が増え、食べ歩き文化が定着した。しかし、年末特有の買い物需要と重なることで、問題が表面化した形だ。
市場では、混雑対策としてほかにも工夫を凝らしている。少人数での来場を勧めたり、保存のきく商品は早めに購入するようアドバイスしたりしている。また、一部の店舗ではオンライン販売を強化し、年末の負担を軽減。公式サイトでも「年末の買い出しのコツ」を公開し、朝早い時間帯の利用を勧めている。
地元住民の反応は様々だ。近くに住む60代の女性は「正月準備で毎年築地に来るけど、観光客が多いと疲れる。呼びかけはありがたい」と歓迎する。一方、観光で訪れたという20代の外国人旅行者は「混雑は知らなかったけど、ルールを守って楽しみたい」と話す。
築地場外市場は、銀座からも近くアクセスが良いため、観光スポットとして定着している。普段は新鮮な海鮮丼や玉子焼きを目当てに多くの人が訪れるが、この時期は買い物優先の雰囲気が強まる。運営側は「観光客の皆さんには、1月以降や平日をおすすめします」と代替案を提案している。
この取り組みが、市場の持続可能な運営につながるかどうかが注目される。食の文化を守りつつ、観光とのバランスを取る築地の挑戦は、他の人気スポットにも示唆を与えそうだ。
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