鎌倉市、「スラムダンク」デザインの原付ナンバープレート交付停止 オーバーツーリズム対策で住民配慮

「スラムダンク」デザインの原付ナンバープレート

神奈川県鎌倉市は、江ノ島電鉄鎌倉高校前駅近くの踏切をデザインした原動機付自転車用のオリジナルナンバープレートの交付を、2026年1月30日受け付け分までで停止すると発表した。2014年から交付が始まったこのプレートは、市の魅力発信を目的に公募で選ばれたもので、市民の7割近くが選択する人気デザインだった。しかし、近年深刻化するオーバーツーリズムの問題を受け、住民への配慮から一時停止を決めた。

このナンバープレートのデザインは、湘南の海を背景に江ノ電が走る踏切の風景を描いたものだ。人気漫画「スラムダンク」のアニメオープニングで似た構図が登場したことから、ファンの間で「聖地」として知られる場所と重なる。2022年に公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」がアジア各国で大ヒットした影響で、特に中国や韓国からの訪日観光客が急増。踏切周辺の住宅街では、写真撮影のための路上立ち止まり、線路内への侵入、ゴミポイ捨て、違法駐車などのトラブルが相次いだ。

鎌倉市によると、住民から直接の停止要望があったわけではないが、「デザインが観光客の集客を促していると不快に感じる市民もいる」との声が寄せられたという。市税務課の担当者は「プレートを交付し続けることが、市が積極的に誘客しているように見えるのを避けたい」と説明する。停止後も、すでに交付されたプレートは引き続き使用可能で、通常の無地プレートに切り替わる。

この場所の問題は、数年前から表面化していた。市は2017年から週末を中心に交通誘導員を配置し、2023年には平日も拡大。2025年に入ってからは、公園に撮影エリアを設けたり、警備員を最大7人に増やしたりと対策を強化してきた。中国の国慶節連休中には1日数千人の観光客が訪れ、誘導員がごみ受け取りまで行う事態もあった。一方で、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングで警備費用を募るなど、負担軽減の試みも進めている。

地元住民の反応は分かれている。近所に住む50代の男性は「プレートが原因とは思わないけど、観光客のマナーが悪いのは事実。少しでも減ってくれれば」と話す。一方、原付を利用する30代の市民は「かわいいデザインで気に入っていた。寂しいし、ナンバープレートで観光客が増えるとは限らないのに」と残念がる。別の住民からは「意味がないのでは」という疑問の声も上がった。

オーバーツーリズムは鎌倉全体の課題だ。歴史的な寺社や海沿いの景色が人気だが、狭い道路が多い住宅街に観光客が集中しやすい。市は今後も多言語看板の設置や誘導強化を続け、観光と住民生活の両立を目指す。担当者は「プレートの停止は一つの象徴的な措置。根本解決には観光客の理解が不可欠」と強調する。

この決定は、他の観光地でも参考になりそうだ。人気コンテンツがもたらす経済効果の一方で、地域の負担をどう軽減するか。鎌倉の取り組みは、そんな議論を呼び起こしている。

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